Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme

Aozora Bunko

三

けれど、市ノ瀬をまだわたくしは、自分ひとりのものにできない弱味を白状いたさなければなりません。奥様、これは市ノ瀬には内証にしておいてくださいませ。わたくしの我まゝがまたはじまりました。

三

井出康子は、ちよつとまゆを寄せた。北原ミユキには、おくびにも出さずにおいたことが、市ノ瀬牧人の口から漏らされているらしいからであつた。しかし、つぎの瞬間には、康子は、もう、口もとに微笑をうかべていた。そこまでのことが明らかにされていて、それで北原ミユキの方で気をまわしていないことが、なによりも彼女には安心であつた。

そこで、康子は、部屋のすみのテーブルに向つて、返事を書きはじめた。わざと同じ封筒にあて名を別々にした二通の手紙を入れておくつもりであつた。

ミユキ様

まず、おめでとう。もう一度言いますが、ほんとにおめでとう。

わたしは、自分の手柄だともなんとも思いません。相会うべきものが会い、結ばるべきものが結ばれたのだと信じます。あなたこそ、よくも勇気をだしてくださいました。なみたいていの勇気ではないとお察しいたします。道が明らかに示されていたとは申すものゝ、それが自分の進むべき道だと信じ、その道の上にどんなほのおが燃えあがつていても、それが一たんはくゞるべき門だと信じることは、なか/\できないものです。