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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme

Aozora Bunko

二

息子のモトムとあんなに別れを惜しんだ少女は、中園の娘、ヒデ子ではなかつたか。

とはいうものゝ、彼女は、こゝまで来て、あらわにそれと言いたくない自分のひそかな期待、本心とみられることはまだ/\承服できないような中園に対する一種の興味を、もう否定はしなかつた。

地獄の旅のような二日二晩の汽車の中で、彼女は、うつら/\考えた――市ノ瀬牧人の前からはどうしても姿をかくさなければならない。永久に……そうだ、永久にだ。自分というものをいまだれかの手にゆだねるとしたら……。彼女の胸はあやしく波立つた。

二

待合室のストーブのまわりは、折り重なるように群集がひしめき合つていた。

こゝでは、船の欠航がどういう原因なのかを人々は論じ合つている。濃霧のためだと言うものもあり、暴風の警戒が出たからだと主張するものもあつた。しかし、一人の厳めしい洋服姿の男が、薄笑いの中で言葉を濁しながら、近頃、機雷がおびたゞしく流れてくるからだと、断言したので、一同は、是も非もなく口をつぐんだ。

井出康子は、待合室の一ぐうにやつと腰をおろす場所をみつけ、リュックと手提げカバンを下において、くた/\になつたからだを休めることにした。