Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
いゝか、冷静に聞けよ……」
夫の調子は、しごくまじめではあるが、どこかよそ/\しく改まつたところがあり、康子は、この自分にも当然関係のある重大な事柄を、こんなふうな調子で夫自身の口から伝えられるのはいやだつた。なぜもつとくつろいだ、自然な、親しみのある、しみ/″\とした調子で話しだしてくれないのか!
「ちよつとお待ちになつて……。あなた、後生ですから、もうすこし……」
「もう少し……なんだ?」
「えゝ、もう少し……なんて申すんでしよう……。とにかく、あたくし、まだ、なんにも気持ちの用意なんかできていませんの。いきなり、そんなふうに、冷静に聞け、なんておつしやつたつて、無理ですわ」
「やつかいなことを言うなあ。だつて、さつきお前は、早く話をしろつて言つたじやないか」
康子は、黙つて夫の顔をみつめていた。そしてその眼の動かぬ表情のなかに何ものかを読みとろうとした。しかし、彼女は、やがて胸にこみあげてくる恐怖に似た感情をおさえることはできなかつた。そこで、静かに席をたちながら言つた。
「あたくし、どうしてこういく地がないんでしよう。いままでずつとお側にいたのなら、いまなにをおつしやつても、そんなに驚かないだろうと思いますの。