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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme

Aozora Bunko

武装解除から以後の二月ほど、彼に民族の素質ということを考えさせた時期はなかつた。そしてまた、そのことから、自然に、自分の属している民族の宿命的な不幸を、この時ほど痛切に胸に感じたことはなかつた。

それは彼がこの年まで経験したことのない精神の危機とでもいうべきものだつた。その証拠に、彼はありとあらゆる空想に身をゆだね、極端から極端への気分の移り変りを経験し、愛するものに冷やかな眼を向け、憎悪の念をかき立てるよろこびにひたつた。

ある時は、カンボチャの山の奥にひそんで未開人の娘を妻にしようと思つた。そうかと思うと、またある時は、自慢の脚にものをいわせ、陸路をアジアからヨーロッパへ抜けてスカンヂナビヤの一角にたどりつき、文明と平和の理想郷がどんなものであるかをたしかめてみる気になつた。が、ふ虜生活のさま/″\の経験と、いやでも聞かされる内地の日に日に変るすがたとは、彼のえがくすべての夢を、片つぱしからもみ消した。かつては無我夢中で、しかし運命に従うように身をおこして銃剣をとつた彼は、今度は、もつと冷静に、自分の力でひとつの路を切りひらく決意に促されて再び祖国の土を踏んだのであつた。