Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
そこは客席の廊下になつているらしく、五六人の若い男女がひとかたまりになつて首をつき出し、何やら大声にわめいたり、いつせいに笑いこけたりしている。いずれも二十前の、学生とも工員ともつかぬ服装で、なかには巻煙草をくわえたのや、くちびるをまつかにぬつたのもいる。これはまた、場所がらといい、だれはゞからぬ振舞いである。男は女の肩へ手をまわし、女は男の帽子をひつたくつて窓から捨てるまねをする。すると行列のはるか後ろで、仲間らしい男の、妙にうわずつた声がこれにこたえる。
市ノ瀬牧人は、思わず身ぶるいをした。これはまたなんという「不自然」であろう! 青春の放たれた世界とはこういうものであろうか? 彼は気がつくと、わきの下に汗をかいていた。しかし、彼は思いかえす。これを「不自然」とみる自分の方が、むしろ「不自然」なのではないか? そもそも、人間が「自然」であるという状態は、なにを標準にするか? いうまでもなく「人間らしさ」である。「人間らしい」すがたというものを、自分は理想化しすぎてはいないか?
彼は、もう何も見ていない。自転車へ乗るのも忘れたように、眼をふせたまゝ、静かな横町の方へ歩きだしていた。