Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
「あら、おめずらしい……。どうしてらつしやるの、中園さん……?」
この中園と呼ばれた男は、服装だけではすぐに見当はつきかねるが、これも現役将校として最近までサーベルをさげていた夫一徳の後輩なのである。
「どうもそうじやないかと思つたんですが、奥さんが、あんまり知らん顔をなすつてらつしやるから、ちよつとまごつきました。いかゞですか、その後……? 井出大佐殿もお元気でしような」
隊附時代から、最近に至るまで、思い出したようにちよくちよく遊びに来る後輩の一人で、それほど頭はよくないけれども、勤務の上では模範的といわれる青年将校の部類であつた。
陸軍大学は一度失敗してあつさり思いきり、高射砲の実地方面をやつて、射撃指揮では折紙つきというところまで行き、自然、井出一徳とはわりによく話が合つた。
夫より三つ年下で任官は五年もおそく、そのうえ一方が大佐になつた時、まだ少佐でいた、この同連隊出身の後輩を、康子は時にはいくぶん軽く扱うようなふしもあるにはあつたが、いわゆる羽ぶりのいゝ出世組にくらべて、どこか「話のわかる」ところが気に入り、立ち入つたこともずけずけ言えるような気がしていた。