Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme

Aozora Bunko

四

あたしね、はつきり言いますけど、もう世間体や、お義理や、ごまかしや、そういうもんはいつさいごめんなの。兄さんが、今から思うと、ご自分のこうと信じる道をとりなすつたように、あたしも、女ですけれど、女だからというひけめを感じずに、自分の納得できる道を歩こうと思うの」

そこまで言つて、康子は、なぜか胸がいつぱいになつた。

四

隣の部屋でじつと二人の会話を聞いているらしい母と義妹とが、なにやら口早に、こつちへ聞えよがしの言葉を交したように思つた。康子は、聞くともなしに、そつちへ気を配つたが、あとはひそひそ話になつたので、

「とにかく、あとのことはあたしでできるだけのことをしますから、一日もはやく、お母さまと百々子さんを、どうかお落ちつきになれるようにしてあげてちようだい。こゝの生活は、ほんとにお二人にはお気の毒で……。荷物もお母さまと百々子さんで、お入用のものをみんなお持ちになるようにしていたゞくわ。あたしがモトムを連れてどつかへ今すぐ移るつていうことは、あんまり角がたちますから……」

すこし言い過ぎかとは思つたけれども、彼女にしてみれば、事を早くきめてしまうのには、もうえん曲な言いまわしはしていられなかつた。