Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(五)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(五) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N1. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N1 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 325.249 Zeichen · 653 Bildschirme
「兄君もやはり心では妹が可愛いんですね。わたくしたち二人のために、こんなにまでして下さるなんて」
呉妹――今では玄徳の妻たる新夫人は、そういって感謝した。
この若い新妻を擁して、玄徳はここに住んだ。金珠珍宝、無いものはない。綺羅錦繍、乏しいものはない。
食えば飽満の美味、飲めば強烈な薫酒、酔えば耳に猥歌甘楽、醒むれば花鳥また嬋娟の美女、――玄徳はかくて過ぎてゆく月日をわすれた。――いや世の中の貧乏とか、艱苦とか、精進とか、希望とかいうものまでをいつか心身から喪失していた。
「……ああ、困ったものだ」
それを見て、毎日、溜息ばかりついていたのは、彼の臣、趙雲子龍だった。
「そうだ……一難一難、思案にあまったら嚢をひらけと軍師にはいわれた。あの錦の嚢の第二は今開くときだろう」
孔明から餞別に送られたその内の一つを、趙雲は急に開けてみた。すると果たして孔明の秘策が今の心配によく当てはまっていた。彼はさっそく侍女を通じて、玄徳に目通りを求めた。
「たいへんです。こうしてはおられません」
いきなり告げたので、玄徳も驚かされた。
「何事が起ったのか?」
「赤壁の怨みをそそぐなりと号して、曹操みずから五十万騎を率い、荊州へ攻めこんで来たとあります」