Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
涼風に灯を吹き消されたか、はためく草の中は真ッ暗であるが、中に蠢く三、四人の黒い影が、船を岸に着けると、すぐ総かがりで一人の女を抱き上げて来る様子。
「はてな……」
と新九郎は物蔭に身を潜めていると、浅瀬の水をザブリザブリと踏んで来る男の群は、必死にもがく女の力を押さえきれずに、岸へ着くとすぐ、どっかと猿轡をはめた女の体を抛りだした。
「こん畜生め、怖ろしい力を出しやがる」
と一人の男は、あたりに人影が見えないのに安心し、腰を下ろして一服という様子であった。
「おいおいお嬢さん。お前が幾らじたばたしたところで、男の腕から逃げられるものじゃあねえ。いい加減に往生しねえ」
「そうとも、大体親分が助けてやった命じゃねえか。いわば命の大恩人だ、そのお方の云うことをきかねえから、今までてめえにかけた入費の代りに、祇園へ売り飛ばしてくれるのだ。それが嫌なら親分の妾になれ」
「どうだいお嬢さん、ここらで考え直しゃあ間に合わねえこともねえ。うんと云って俺の云うことに従うか」
「畜生、まだ強情に冠りを振ってやがる。やいッどうだ」
と寄ってたかって声も得立てない女を、びしびしと苛んでいる有様、見兼ねた新九郎は前後を忘れてばらばらと躍り出した。