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Japanische Klassiker mit Furigana

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けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme

Aozora Bunko

御方は今、朝の風呂から上がって、麝香や、白檀油の匂いと覚えるものが、ぷんと鼻をうつばかりな化粧の間に入って、心しずかに、いやが上の装いを凝らしている。

「御方さま」

「何かえ?」

鏡の前から振り顧って、後ろに、手をつかえた老女の水瀬を見た御方の顔は、もう曙の花が露を払ったような身じまいを済ましておられた。

「ただ今、蘚伯さまが、いつもの通り、診てお帰りになりました」

「そうでしたか。そして、今朝あたりのご容子は」

「もうお薬も要らないほどと仰っしゃられました」

「まア、そんなに早く……」

水瀬の辞から察するに、どうやら寮のうちに、誰か寝ている病人があるらしい。けれど、医師の蘚伯がよいと云ったのを、御方は何故か、不足らしい色を見せて聞いたのであった。

「おおそれから、妾が頼んでおいた品は?」

「蘚伯さまがしきりに考えているのを、無理に説いて貰っておきました。強い蘭薬ということでござりますゆえ、分量を間違えぬようにと、くれぐれ申し残しましてござります」

「何の、蘭薬というても、いろいろな薬を京都で扱うている覚えもある、心配はありませぬわいの」

「ではこれへ置きまする」