Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
二人はもうどうしていいか分らぬほどな情炎に包まれて伽羅油のとろ火で煮られたかのような酔心地になりかけていた。――その時。
「千浪、千浪」
と呼ぶ父の作左衛門の声がした。
「は、はい……」
と慌ててそこから庭下駄の音を転ばせた千浪が、前の離室の側まで帰って来ると、愕いたように床下からぱっと飛び出した男が、千浪の胸にどんとぶつかった。
「あ……」
とよろめく隙に、男は脱兎の勢いで裏手へ駈けだした。と見た作左衛門が、
「怪しい奴ッ」
飛び降りて追いかけるその顔へヒュッと風を切って飛んで来た狙い捨ての手裏剣。はッと作左衛門が身を沈ませた瞬間に、曲者は裏塀に手をかけて身を躍らせた。
「おのれッ」
とその刹那、駈け寄った春日重蔵が手練の抜撃ちに、曲者はワッと叫んで血煙りと一つになって大地へ落ちた。
「おお此奴は先ほど、廻国の武芸者に扮装して入りこんだ矢倉伝内めじゃ!」
と重蔵はすぐ死骸の懐中を探って二、三通の書類を引き出した。
「これご覧なされい、拙者初対面から怪しい奴と睨んでおりましたが、案の定大月玄蕃の間諜でござった」
「さてはさすが佞智の玄蕃めも、貴殿の腕前を知っているゆえ、早くも当日の試合に出ることをおそれて、探索を入れたのでござろう」