Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
で、常から睨まれていた山手組は、否応なく十手の雨の的となって、たちまち二、三人はそこに召捕られ、残る者は皆散々に逃げ失せてしまった。今は、深見重左にどれ程王義明致流の腕前があろうと、また天魔の勇があろうとも施す術はなかった。彼は最後の一太刀を御方目がけて投げつけざま、
「覚えていろ! この返報はきっと思い知らしてやる」
と捨科白を云って、あたりの十手をバラバラと薙ぎ退けながらたちまち姿を隠してしまった。御方は逃げて行くそれに何の未練も持たず、騎馬の与力を振り顧って、
「それへ来やったのは渡辺か村越か」
と訊ねた。新九郎はまたしても愕かされた。それはまったく上役人へ対するような言葉ではない。だのに馬上の与力は無礼咎めもせず、ヒラリと鞍壺から飛び降りて小腰を屈め、
「は、お役詰の当番小田切千助でござります」
「大儀であった。山手組の無頼者達に召使の者がすんでのこと攫い行かれるところであったが、もう散々に逃げ失せた様子ゆえ、どうぞ後にかまわず引き上げて賜もれ」
「しかし、とかく物騒の絶えませぬこの頃、殊に夜中のお出ましは相成るべくはお控え願いとう存じまする」
と千助は釘を差すように云った。