Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
しかし、眠れる良心は、時折、俄然として醒まされる。けれど、彼自身剣の深さを知れば知るほど、鐘巻自斎の非凡が分り、名を思いだすだけでも怖ろしい感じに衝たれ、何と思おうが駄目だと観念してしまった。いや、そう諦めるよりしようがなかった。
「そうだ、拙者は千浪と抱き合って、音無瀬川へ身を捨てた時に、あのままこの世へ甦えらなかったら幸せであったのじゃ……、でなければ、昔ながらの新九郎でいれば、江戸三界でこう苦しむこともなかったろうに、いっそ死ぬか、死んでどうなる……」
と思いながら、じッと地べたをみつめてゆくと、御方のやかな姿やお延のあの艶めかしさが、足もとへ絡むように泛いてくる。
「酒だ、酒がさめた、酒が醒めた!」
彼はこう叫んで、不意にもの狂わしく走りだした。
×
どこをどう飲み歩いていたか、新九郎は、それから四日ほど後の夕方、またも、人通りの多い日本橋の袂に倚りかかって泥酔していた。
「何だと思ったら、珍しくもねえ酔どれの侍か」
「そうくさすない、上野の丘で山手組を八、九人も向うへ廻して、可哀そうな虚無僧を助けた御曹子の新九郎だ」
「え、これが御曹子の親分か、姿にも似ず大層な腕前だそうだが、怖ろしい飲んだくれだな」