Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
羊腸たる道を静かに蹄の音が辿る。馬上の侍は懐中から一冊の古書を取りだして読み初めた。チラと下から表紙をのぞくと、「剣秘不識篇」としてある。
馬方の眼が、キラリと光って、その文字と編笠の下から垂れた長髯とを見較べている気振り。でも、しばらくは黙々と山の中腹まで来たが、
「お侍さん」
と、不意に歯切れのいいところで振り顧った。
「何じゃ」
武士も疲れた眼を休ませる。
「失礼だが、旦那は剣術使いというやつだね。年中、やッとうを商売に、諸国を遍歴している武芸者でしょうが」
「ふふ……まあそんな者かも知れぬな」
「ところで、ご生地はどちらでございますねえ」
「つかぬことを訊くではないか」
「ええ、ちょっと心当りがありやしてね」
「播州船坂山におった者じゃが……何か、そちもあの辺の者でもあるか」
「なアに、わっしはこれでも江戸ッ子です。――すると旦那は、今から七、八年前、桔梗河原の大試合に、春日重蔵という対手の者を打ち込んで、その片足を打ち挫いたことがありゃしませんか」
「おう、よう存じておるの」
「じゃ、てめえは鐘巻自斎だな?」
馬方の男は、いきなり手綱をグイと曳き詰めて、馬上の侍をハッタと睨んだ。