Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
「オーイ!」
彼はそこで必死に誰かを呼ぼうとしたが、追いついて来た自斎の猿臂が、ムズと彼の帯際を引っ掴む。男はチェッと舌うちして、その小手を払おうとしたが、やッという気合いを聞くと同時に、彼の五体は苦もなく草むらの中へ投げつけられていた。
「これッ、仔細を言え、何ぞわけがあろう」
「その訳は今知らしてやる!」
「待てッ、まだ逃げるか」
「べら棒め、逃げるんじゃねえから待っていろ」
二度目に掴まれた襟元を引ッぱずして、あッという間に男は女滝の滝壺目がけて、ポーンと跳び降りてしまった。
が、彼の体は、猿のように途中の梢に引っかかった。そして枝から下の枝へ、スルスルと降りて行くよと見る間に、たちまち姿が見えなくなった。
「はて、山稼ぎの賊とも見えぬが、不思議な奴……」
自斎は編笠のふちを押さえて、上からそれを見降ろしていたが、サッと足もとから吹き上げてくる一陣の冷風と共に、白霧濛々と立ちこめている滝壺のあたり、耳を衝つごとき振鈴の音がりんりんと響いてくるのを聞いた。
三
一方、雑木の茂みの中を辷り落ちるようにして、下へ降りた男は、崖の根っこに片手を支えて滝壺の中を見降ろしながら、