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Japanische Klassiker mit Furigana

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けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme

Aozora Bunko

と茶盆を持って来た亭主は、編笠をとった浪人の顔を見て、しばらく茶も渡さず瞶めて、

「旦那様はこの間、桔梗河原の試合で春日様を撃ち込んだ、京極方の先生でござりますな」

と云うのであった。それは紛れもない黒漆の長髯があるので、その日の試合を見た者なら一目で知れる鐘巻自斎に違いなかった。

「はははは、そりゃ他人の空似であろう」

と自斎は寛達な笑いに紛らせて茶をすすったが、亭主はぷいと奥へ避けて、それからは自斎が言葉をかけても返事もしなかった。

「おかしな奴もある者じゃ……」

と自斎は山家者の偏屈と別に気にも止めず、四方の風光に気をとられていた。

彼は播州船坂山の住人とばかり名乗って、桔梗河原の一試合で山陰道にその名を轟ろかせ、京極丹州の切なる招聘をも退けて、飄然とここへ相変らず粗服の旅装を現わしたのであるが、そもこの鐘巻自斎の剣法とは、如何なる奥底のものであろうか、ただ神変不可思議な霊剣の所持者とばかり見て置くのはやや飽き足らない。

当時、承応の時代に最も行われている剣法の諸流は上泉の真蔭、諸岡の神道無念、高弟兎角の微塵流、将軍家流とも云うべき柳生、宮本没後に伝わるところの二刀、新免正伝派、伊藤弥五郎を祖とする一刀流、別れての小野派、忠也派、憲法の吉岡流、その他、天道流、中条流、田宮流、無外流、鞍馬八流、心形一刀