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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme

Aozora Bunko

あたし、井出家との縁を切ろうなんて、そんなこと、夢にも思つていませんわ」

そう言いつゝも、彼女は、実のところ、自分の弱気がまだそれを言わせるのだと、われながらいくぶん歯がゆくさえ思つたが、

「しかし、ねえさん、物ごとをはつきりさせるというのはそういうことですよ。ぼくは井出家の一人として今度の事件を慎重に考えてみてです、白状すると、ねえさんの態度というか、気持というか、ちよつとぼくのふにおちないのは、いわば、悲しみの中心にあるはずのねえさんがそも/\はじめから実に冷静だ。冷静なのはいゝとして、むしろ、心こゝになきがごとき、無反応にちかいところがみえることです。ねえさんの心はもう兄貴からはなれているんですか? それにしても、それを、こんなにも早く、こんなにもあつさり見せつけられたんでは、ぼくも黙つてはいられないんです。ねえ、そうじやありませんか、お母さん」

しゆうとの乃婦は、黙つて、うなずく。

康子は、自分のあれからの態度や顔いろにそういうところがみえたとしたら、それもしかたがないと思つた。

夫の自決をしらせる電報を受けとつた瞬間、彼女は、だれのためにも泣けなかつた。