Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme

Aozora Bunko

「きのうはね、モトムとこんな話をしたの――もうじきお山にワラビがでるでしよう。そうしたら、一日お弁当をもつて草つみに行こうつて。……道がわからなくつて迷子になつたら、どこでもいゝから、いちばん近くのお百姓家へ頼んでとめてもらおうつて……。こういう空想は、子供はそりやあ面白がるのね。でも、そういう時、子供はすぐに、そのお百姓家をいんさんなものにしたがるのよ。わるいお婆さんが住んでたら、とか、人殺しの相談をする声がどつかから聞えて来やしないか、とか……。そう言えばあたしたちおとなだつてそうね。たゞ空想をしてみるだけでも、なかなか楽しい空想にするのには骨がおれるわ。どうしてでしようねえ……」

なかばひとりごとのように、こんな話をしだす彼女の方へ、市ノ瀬牧人は相変らず背を向けたまま、

「そういうふうに仕込まれてしまつたんだから、そうなるのは当りまえですよ。わしもしばらく外地の生活をしてみて、つく/″\そう思つたね。日本人つてやつは、楽しい夢をみるなんてことを、じつにバカげたことだときめてかゝつてるからね。だが、一方からいうと、それだけ現実のみじめさを平気でうけいれるつていう強味もあるだね」