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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

三月十七日

でしょう。「物干」という題のを覚えていらっしゃるかしら。季節は今ごろです。暖い春の光に質素なふとんを陽に向けてかけつらねた小さい家の物干。という描写からはじまるのですけれど。彼等は二人の子供のよう、彼等は二羽の雀のよう、という句もあるわ、覚えていらっしゃるかしら。親しい友達に一寸かくれん坊して、笑ってよろこんでいる彼等、そういうような初々しさの漲った描写もあります。

私は屡※(二の字点、1-2-22)この詩をよみます。机の横の障子の外の竹すだれの外には、ここの物干が明るく陽に光っています。そこに折々あなたの着物だのがほされて。その間に顔を入れて陽のあったかさを感じていると、その詩の心は何とまざまざと生きて来ることでしょう。あなたの御愛誦の詩のはなしをきかせて下さい。では又、ね、お大切に。

三月十七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

三月十七日  第二十一信

きのうから手紙かきたく。夕飯をしまって、さて、と思っていたら人が来てしまいましたので到頭昨夜は駄目。

けさは、普通の時間に多賀ちゃんがおきましたので随分うれしかった。私はほっとして、すこしね坊。