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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
ゆうべは初めてゆっくりたくさん眠って、きょうは何と久々にいい心持でしょう。ずっとお元気? 手紙いつ来るのかと思っていらっしゃるでしょうね。
さて、三日に立って四日朝着いたら、駅に達ちゃんが出迎えていました。すっかり肩や胸に厚みが出て丈夫そうに艷々した五分苅ボーイです、背はあなたとおつかつよ。家へついて見たらもう御法事の仕度でごったかえっています。台所じゅういろいろのものを並べて。十一時からお式が始り。山崎の小父さん、富ちゃんなど、野原の小母さんも見えました。お祖母さまの十七年忌も一緒でしたのね。光井のお寺の、顎を上へつきあげたような顔をしている坊さんが、小坊主をつれて来てお経をよみました。この坊さんはこの間気がふれたのですって。畑で蛇をつかまえてそこにいるお百姓に、これを食えと云ったが、どうもそういうものはと辞退したら、そんなら俺が食うと云ってくってしまったのだって。光井の家へ来てどなって叫んだそうです(何と叫んだかは知らず)。その人がケロリとして(癒ったのですって)お経をあげました。
それからおきまりのお膳が出ました、ああいうときのお膳の上のもの覚えていらっしゃる? 黒塗のお平にパンが入っていたりいろいろ面白い。