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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
モティーブのはっきりしない日々なのね。だから小母さんなんか富ちゃんに対して、ハラハラハラハラしながら口では二言めには、きもやき息子と云って、しかも息子にこきつかわれていらっしゃる。いろいろの家の風は複雑ですね。本当にそう思う。
島田の家では、子供でも出来たら、子供が集注した注意で学校の勉強の出来るような場所と空気をつくってやることが必須ですし、あすこで勉強ずきの子供なんか出来っこないもの、床が絶えずゆすれるような落付かなさで。友子さんは今のところそういうガサガサバタバタではないし、おそらくそうはならないでしょうが。島田の方は又モティーヴが素朴単純にハッキリしすぎている――曰ク儲けにゃならぬ。このモティーヴもなかなか苛烈に人間を追いたくって居りますからね。その根の深く広いこと、実に実におどろくばかりですから。
しかし島田の商売はなかなかむずかしいようです。十ヵ村の肥料配給の元しめになったはいいが、あちこちから送りつける肥料の為替は皆島田の家で、一応切っておかねばならず、その嵩が常に何百円という嵩で猶加入している肥料店が、申込んで配給させた肥料を受けとるとか、受けとらないとかいうことも云えるらしいのですね、これは大したリスクなわけで、きのうも、どこそこがこの干天で何々という肥料は出まいから、受けないと云って