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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
「日々の映り」の題として私の心に浮んだ同じ必然がうつったというのは大変面白く感じました。ほかならぬそのことなのですもの。一つの道を歩いてゆく、そこにこめられている感動、一本の髪の毛にさわるその感動、渇きもとめる思いや清純なる憤りや深い哀愁が日々に映る、その意味からの題ですから。しかし題として上乗でないとは申せますね。気がついて見ると私たちの生活感が、いかにつよく歴史のうつりへの感想に貫かれていることでしょう。題は「一九三二年の春」以来、「刻々」でしょう、「その年」でしょう、「三月の第四日曜」又はこの「日々の映り」や。作家の生活の反映は微妙をきわめるものですね。
仕事のためよそへ行こうかとふらつく気持。素直にフラつく心持として認めるのが正直のところと思われます。実験室的なものを欲するのではないの、単純に、うちのごちゃごちゃからホッとしたい気持なのね。自分が命令したり、さしずしたりしてやらないと、いくつもの顔がそろってこっち見て待っている家の暮しと、仕事と、その他と、一人っきりやっていると、いやになるのよ。そんなもの放たらかして仕事だけになりたいの。