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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

(鵠沼ホテル)

そこの家は日本風の昔からある離室をいくつかもっていて、そちらの方はちゃんとした日本式のところで、茶がかっていて大分落付きます。月ぎめをやっているそうでした。90.00 から。この月ぎめというところに一寸気をひかれ離れを検分したわけです。休むとき、不意に人に来られっこのないところにいるというのは何といいでしょう。仕事いそがしいとき、人の来っこないという心持は何といいでしょう。ここなら新宿から一時間二十分、デンワもきくし、夜でも東京へ楽に出られるし、などいろいろと条件を考えたわけです。こんなことを条件に浮べて見たというわけよ。

四時二分で鵠沼を出て、五時すぎついて、新宿で一寸夕飯たべて、かえって、幸子ちゃんのところへ門の鍵やポストのものとりにたかちゃんが行っていて、私は火をおこしていたら、「おでんわです」というので黄色いドテラの上に羽織きて出かけたら、栗林氏でした。この電話は私をすっかりなぐさめました。あああなたにも小さいおくりもの、とうれしかった。そこへこのお手紙がもって来られたという次第です。いい折のいい折についたでしょう? ねえ、そして速達にしようかと思ったとあるのですもの。