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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

というのを(映画よ)観ました。この二人の舞踊家は世界の名コンビと云われる踊りてで、現代舞踏を創ったカッスル夫妻の生涯を物語りにしたものです。カッスルがイギリス生れで、欧州大戦(1918)に飛行将校として、分列式のとき、着陸の際、相手のスピードののろさから、自分の機体が先着者の真上になり、衝突をしてしまうか、自分が犠牲となるか、二つに一つとなった刹那、垂直上昇をやって、おちて死にました。(今ならこの位のはなれ業では死なないでしょう)。そんな場合の人間的な立派さが芸術家の真髄をつらぬくというところにフレッド・アステアの語らんとするものもあるらしく、カッスルが戦線から賜暇でかえったとき、余りおそいので不安におののいていた妻のところへあらわれ、二人のおどる踊りは、実に美しい情感が溢れていて、涙を誘うほどでした。深い愛のサスペンスのこもったゆるやかな優雅なふりから次第次第に高まり放胆となり燃え立つ旋回飛やくの後、再びしずかな夢に誘うようなメロディーにうつって二人の踊りては互の体を支え合いながら云いようない優しさにしずまります。

こんな抒情詩のような踊りをこれまで見たことがありません。