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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

現実の発展を偶然にたよるということが、フィクションの法則みたいに云われているが、それはまだしも素朴な部ですね。偶然にもあり得ないことを、必然のようにつかってテーマを運ぶのだから、通俗に堕さない文学上の判断というものが、何と大切でしょう。

文学のこういうことに関して、どうせ門外漢には判らない、となげすてることで、一応文学の専門家と云われる人々のフィクション性をバッコさせるのですね。現実を現実として見てゆけば、作品のフィクション性から真のテーマのありどころが、やはりわからないことはないのですから。そういうことでもいろいろ深い感想が刺激されます。小説家が過去の範疇からよりひろいものとしてその常識上のカンも発育させるということは、何と大切なことでしょう。現実の真を見ようとする熱意の及ぼすひろさということも考えます。

長篇の準備は四月に入ってからです、尤もあれこれ折にふれてはこねているけれども。私は何か気持のいい作品がかきたいの。清潔で、深くて、ブリリアントな人間の心が描きたいのです。

時期のこともあり、結局うちにいて、毎日をよく整理して、多賀ちゃんにも出来るだけ助けて貰って、そしてその仕事はやりましょう、よそへ行くことは不自然です、そうして、今の私たちの生活として、そうしてでなければ書けないというようなものをかく