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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

三月二十二日

ああこれだけ話して、すこし心持がよくなりました。こんな種、太郎ではないがダイジダイジで、喋らないしね。ロンドンやパリが、その女のひとの目で見られるのも面白いこと。ではどうぞお元気で。忙しすぎないように。

三月二十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

三月二十二日  第二十二信

ひどい風! 南の方の空は赤茶けた埃の色でよどんだようになって居ります。

今、妙なことして書いているの。ペンをもっている方の手首に、ホータイのあるのはけさ御覧のとおり。その上、おなかにゴムの湯たんぽをかかえこんでかいているの。変でしょう?

きょう、そこの裏の池袋へ通じる市電の停留場にいたら、風がスースーと体にしみてしみて、何とも云えない気がしたら、かえって気分わるくて、パンをたべるとすぐ湯タンポを二つも入れて臥てしまって、午後やっとおき出し、この体たらくです。

この間うち暖かったのに急にこうだから。春は荒っぽいこと。面白さと云えば云えるけれども。

あなたもどうぞお体をお大切に。この頃の気候は血を出す人の多いときだそうですね。そのことについて面白いことききました。普通の人は、ドッと出ると非常に驚愕して思わず息をつめるのですって。