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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

バカほどこわいものなしと、昔の人は賢いことを申しました。

尾崎士郎が「三十代作家論」を『都』にかいています、その渾沌性について。しかし尾崎士郎自身、「人生劇場」ですこし金まわりがよくなったら、やはりきわめてあり来りの生活形態を反復している有様だから、自身の常識性に足をとられていて、やはり文学の中でものを云っている。そんなものであるものですか。昔の文学は常識からの飛躍であったとすれば、今日の彼等のとことんのところは、常識の埒外のものをもって常識のなかにとびこむ方向をとっている。つまり生活の土台はちゃんと常識の中のもののままでかためてゆくことを眼目に文学をやっているようなところがあります。だから石川なんて、尾崎の云っているように逞しい野性なんかどころか、おっそろしい皮の厚い実際性です、逞しき野性なんかという文学性で、尾崎は詩吟調の自身の文学から脱けられないのでしょう。

尾崎は、世相が、彼等を流行児にしたのであって、云々と云っています。しかし、読者の何が、いかなる要素が、彼等を流行児にするエレメントとして作用しているのでしょうか、この辺三四年前、「大人の文学」