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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
常識というものがイギリスでは偏見に対して諷刺となり、日本の寛さんは、ショウの弟子のようなところから全く質の異った常識に立って通俗小説に行くところ(いつぞや歴史への態度でもふれましたけれど)面白いことね。老セドレとアミーリヤという娘が、株で失敗して苦しい生涯を送っていると、兄息子が印度で大した身分と金とをこさえて来て、それをひろい上げるというところもいかにもあの頃のイギリス気質ですね。ディケンズはいつも慈悲ぶかい紳士貴族を出して救いの神としたし、サッカレはもう一歩進取的で印度の役人にしてちゃんと救いの神の役を演じさせる。こういうところもいかにも面白く思います。日本の小説でこういう慈悲の神はいつも、人情としてしか登場していないことも実に意味ふこうございますね。例えば台湾で大した成功をしている長兄が云々という通俗小説の展開は余りない、人情の背景としての地理的空間は皆無であるか、或はまことに狭くて同じ国というようなところ全く面白い。日本文学の抒情性ということはこんなところにさえひっかかりをもっていて。
きょうはよむ本が種切れなのよ、可哀想でしょう? そういうときのあなたが、お気の毒であるのと余り大きいちがいはない位可哀想でしょう?