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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
九月二十四日(消印)
今上野です。お祭日で、上野は天王寺の墓地へお参りする人ゾロゾロよ。そして、この人通りは黒い紋つきをきたお婆さんや、赤い洋服を着た孫づれというのですから、動きは到ってまちまちで、あぶなっかしい賑いです。すいていると思ったらなかなかの人で、本を出して貰うのに一時間も待ちました。今度は何と御無沙汰したでしょう。九月十六日づけのお手紙十八日に頂き、十八日の速達は夜おそくつきました。そのことはお話しいたしましたね。きのう一葉を終りました。六十枚かいてしまった。ああいう風に偶像化されている人のことは、やっぱりついこまかに見てしまうものだから。あのひとと『文学界』のロマンティストたちとの交渉は非常にふかく、あの時代のロマンティシズムが生み出したひとと作品ですね。「たけくらべ」などは実にその典型です。そして『しがらみ草紙』の鴎外その他が早稲田文学派(自然主義に追々うごきつつあった)に対してロマンティシズム文学のチャンピオンとして一葉を実に押し出しています。一葉はこれらの人のほめ言葉に「ほめることばしかないのか、あやしきことなり」と云っています。あの時代のロマンティストには「たけくらべ」