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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

九月以来金星堂としてはそれ一冊なのですって。経済的理由でもないらしいのよ。一月初旬には出るでしょうって、首をちぢめての態でした。表紙も刷れているの見せました。本文も刷り上っているのですって。だからきっと今度はたしかでしょう。

おなかペコペコでかえってパンたべて、さち子さんが来て一寸話していたら、元看護婦をしていた榊原さんというひと、私の切腹のとき手つだって貰ったりした人、あのひとが結婚しているのが半年ぶりに訪ねて来ました。来年三月にお母さんになる由。そしたら、女学校の五年生で、宮田アキという歌をよむ人の娘が来て(予約)いろいろ話し、皆で夕飯たべ、今皆ひき上げたところ。その十八歳の娘さんは絵をやりたいのです、女学校出たらつとめながら。いろいろそれについての勉強方法の相談なのです。お母さんは歌よみで情熱的で(歌人風な、のよ)アテネ・フランセという名も娘は今まで知らなかったというような状態で、たよりないのね。きっと。この間朝、女大のことを私にきくと云って(勘ちがえよ)母娘づれでかけつけて来て、その娘さん一人で来させてくれ、というわけなのです、我々の家庭での最少年よ。