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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
であるかもしれない。自分は、自分の生きかたと、考えかたでかれらを非難した。
それは海保帆平が、彼の立場で深喜を罵倒したのと同じことではないか。
「おれは、三平のあにいといっしょにいるんだよ」と、幸助は云った。
「なにをしているんだ」
「云えないよ、云ったって平手さんにはわからねえからな」と、幸助は云った。
佐賀町の家は、大川端から中ノ橋の袂を回ったところで片隣りに『船八』という船宿があり、片隣りには『箱文』という小さいが、しゃれた料理屋があった。お豊の家は、黒板塀をまわした二階造りで、狭い庭から(塀の上へ)百日紅と赤松が枝を伸ばしている。一中節の稽古所というより、誰かの隠宅か、囲い者の住居という感じだった。
幸助は深喜を格子口へ案内し「おいらは、こっちからのお出入りはできねえのさ」と云って、入口の脇を裏のほうへまわっていった。
取次に出たのは十三歳ばかりの小女で、すぐに深喜を二階へ導いた。
二階は四畳半と八畳で、お豊は四畳半のほうにいた。寝ていたのを、深喜の声が聞えて起きたらしい。派手な色の長襦袢の上に、男物のような唐桟縞の半纒をひっかけ、鴇色のしごきを前で結んでいた。