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かせいへいだん

火星兵団

海野 十三

「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页

青空文庫

ただ三人の黒い長マントの紳士が、廻れ右をして、向こうへ歩いていくだけであった。

「もしもし、もしもし、お待ちなさい」

駅員は、三人をあやしいと見てとって、後から呼びとめた。ところがあやしい三人は、それが耳にはいらないのか、ずんずん向こうへ歩いていく。

「もしもし、お待ちなさいと言ったら」

若い駅員は、かけ足で三人の後に追いついた。三人は、一せいに後を振向いた。おやというようなかっこうをした。一つのマントが、ぱっとひるがえったように思われた。とたんに、若い駅員の姿も消えうせた。

火星人の人間狩のことを書きつづけていくと、大変恐しくもあり、またおもしろいが、きりがない。

人間狩をする火星人は、うっかりしている人間ばかりを襲ったので、かなりたくさんの人間が、さらわれていながら、その割に、被害報告が、すぐには警視庁へは集らなかった。それがますます火星人をして、人間狩に成功させ、彼らを喜ばせたのであった。

「火星人は誰にもそれとわかる、黒い帽子に、黒い長マントを着ています」

と、拡声機からは、特別公示事項の放送が、ほとんど絶えまなく行われた。しかしそれは、もう午後になってからのことで、かなりたくさんの人間が、さらわれてしまってから後のことであった。