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かせいへいだん

火星兵団

海野 十三

「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页

青空文庫

28 山の上の火

卿の講演放送によって、世界各国は、またさわがしくなった。火星への移住の用意は、うまく出来ているか。ロケットの数は十分にあるか。自分の乗る座席は第何号かなどと……。

しかし中には、卿の放送に対し、悪口を言う者もあった。

28 山の上の火

長い間、傷のため病床に寝ていた新田先生が、ようやく退院することとなった。

三月といえば、いつもの年ならまだ春に遠く、ひえびえとした大気を感じるのが、あたりまえであったが、その年はどうしたものか、日暦が三月にかわると急にぽかぽかと暖くなって、まるで四月なかばの陽気となった。

めずらしい暖さだ。それもモロー彗星が近づいたせいだとあって、人々は、夕暮間もなく、西の地平線の上に、うすぼんやりとあやしい光の尾を引くモロー彗星のすがたを、気味わるく、そうして、また恐しく眺めつくすのであった。

新田先生は、退院の後、すぐさま甲州の山奥の、掛矢温泉へ向かった。

掛矢温泉といっても、知らない人が多いであろう。ここは温泉と言っても、宿は掛矢旅館がたった一軒しかない。その掛矢旅館も、たいへんむさくるしい物置のような宿であって、客の数も、いたって少い。