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かせいへいだん

火星兵団

海野 十三

「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页

青空文庫

すぐには、名前が出て来ないらしい。

「おじさんは名前がないのですか」

「ばかを言え。おれの名前は……」

と、彼はうなっていたが、

「そうだ、おれの名前は、丸木というんだ。丸木だ。よくおぼえておけ」

そう言うなり、丸木と名乗る大男は、うす桃色の湯気の彼方に、姿を消してしまった。

あとには千二一人がのこった。あいかわらず、寝かされたままである。からだは、やはり思うように、うごかない。一体どんなものをつかって、自分のからだを縛ってあるのか、それをたしかめるために、首をもち上げようとしたが、首がじゅうぶんに上らない。のどのところも、何ものかで、床に縛りつけられているらしい。千二は、いつの間にか、彼が捕虜になっていることに気がついた。

捕虜といっても、あたり前の捕虜ではない。火星の生物が乗組んでいる火星のボートの中に、捕虜となってしまったのである。これから先どうされるのであろうか。このまま火星へつれていかれるのであろうか。それとも火星の生物の餌食になってしまうのであろうか。考えれば考えるほど、不安はだんだん大きくなって来る。こうなると、うす気味わるい男ではあるが、あの黒いものずくめの、丸木と名乗るおじさんを、たよるしかない。