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かせいへいだん
火星兵団
海野 十三
「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页
明晩の月に特にご注意下さい。望遠鏡で月の面をごらん下さい。その時、月の面に、何か変ったことがあらわれるかも知れません。どうぞ、明晩の月を御注意下さい」
矢ヶ島天文台は、すこぶる内気で、人々にこう呼びかけるのであった。
明晩の月? 果してどういう月が眺められたであろうか。
いくら矢ヶ島天文台の台長がおかしいにしろ、こう度々月のことばかりを言出すものだから、一度、その放送を聞いて気になり出した人は、そのあとも矢ヶ島天文台の放送を聞かないではおられなくなった。
さて『明晩の月』と、昨日の放送で注意のあった月が、いよいよ夕刻から空に出たのであった。もういよいよ満月に近い明かるい月だった。
空は雲もなかった。いやなモロー彗星の光の尾が、水平線から斜にぼうっと明かるく空を染めているが、これさえなければ、今宵は静かな美しい月の出よと、人々は楽しんだにちがいない。とにかく、その月が上ったのである。
気にしていた連中は窓に寄ったり、屋根に上ったり、または望遠鏡を持出して、その月の面を眺めたのであった。
「なあんだ。別に、あのお月さまは少しもちがっていないじゃないか」