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かせいへいだん
火星兵団
海野 十三
「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页
階段をのぼりつめると、りっぱな円形の広間へ出た。すばらしい高い天井、うつくしいかべ、そうして、見事な望遠鏡が、天蓋の間から、夜の大空へ向いている。
「千二、新田、望遠鏡で見なくても、肉眼でよく見えるから、外廊下へ出よう」
博士は、扉をあけて、外廊下に出た。
火星には、今、夜の幕が下りているのであった。この天文台は、森のうえから、わずかばかり、首をのぞかせているのだった。だから、この外廊下からは、森の高い梢越しに、荒涼たる火星の夜景が見える。
「ほら、あれを見なさい」
博士が、そう言って、天空にきらきらと輝く星をゆびさした。
「ええあれは、何という星ですか」
「あれは地球じゃ」
「えっ、地球ですか。地球は、モロー彗星に衝突されて、まだ、あそこに、かけらでもが、のこっているのですか」
千二は、ふしぎそうに聞いた。
「いや、あれは地球のかけらではない。かけらどころか、地球は、ちゃんとしているのだ」
「えっ、地球は、ちゃんとしているのですか。モロー彗星は、地球に衝突しなかったのですか」
千二は、とどろく胸をおさえて聞いた。
四月四日の十三時十三分十三秒に、モロー彗星は地球に衝突するはずだった。