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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
そんな有様だのに、林町のああちゃんは、小さい息子が風邪ひきで国府津へ行かれないからその代りと云って、湿布している息子を銀座へつれて行って、フジアイスでアイスクリームのましたときいて、あっこおばちゃん大憤激です。
本当に手紙書こうと思っているのです。風邪というものを何と思っているのでしょうと。あなたにぶーぶー申して、お笑いになるでしょう、私は、でも太郎が可愛いの。そして、そういう愛されかたを可哀そうに思うの。そういう愛しかたをするああちゃんも可哀そうなの。そして、腹がたつのです。それを、こうしてここにかく心持。それは女房の心理、ね。こういうブーブーを、あなたはごくたまにしかおききにならないのですから、まあおきき下さい。
こうして話していながら、ああ今夜は誰も来ませんように、と心ひそかに願って居ます。今夜と明日とで、こまかいいくつかのものを仕上げてしまいたいから。
それをすましたら栄さんとやっていたものを終って、『文芸』のつづき何回分か終りまでずっとつづけてかいてしまって、さて、と長篇にとりかかる順序です。
稲ちゃんの「素足の娘」(書下し長篇)よみはじめています。