轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
心の成熟というものは微妙ですね。幼い思い出ばかりにとどまってはいないのね。やはりきょうにちゃんときょうを生きているのですもの。全く近く、全くさながらそのように感じる瞬間をもっているのは不思議な心の力です。私は神秘家ではないけれど、それとは全く反対の現実の活々とした豊富さという意味で、例えばいづみ子がそういう瞬間の横溢の刻々のなかで成熟し、ゆたかにされてゆくことに驚歎いたします。彼女はもとからそうでしたが、やはり敏感です。愛に感じやすくて。よろこびが戦慄のように走るとき、何と上気して気を失いそうになるでしょう。ひき入れられるような身ぶりのとき、いづみ子が声ない叫びで微に唇をあける様子、そのふれる感覚にまかせてゆく風情。非常に趣ふかく、昔の物語りの表現ではないがあわれふかい趣です。
本当にあなたが御覧になったら何とおっしゃるでしょう。ふりわけがみの幼なじみが今のいづみ子に会ったらきっとおどろき、そしてどんなに恋着することでしょう。彼女にとってそれは意外ではないのですものね。自分の心は知っているのですもの。このこの成長、美しくゆたかな成長はみものと思われます。