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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
私はよく自分が女の芸術家に生れ合わせて、いつか何とかして、こういう微妙きわまる女のいのちの姿を描き出してみたいと思うことがあります。
岡本かの子はそういう生の力を或点やはり感じていたのでしょうが、その表現、その再現の世界は、謂わばそういうものに感動する自分の様々の姿を鏡にうつしてみて、我から我に惚れている範囲ですし。
アベラールとエロイーズの話、御存じでしょうか。この二人は二人で神のなかへ没入してゆくことで自分たちの愛の完成をとげようとした中世の男女ですが。かの子の世界でもなく、アベラールたちの世界でもない、リアルな情感の世界があるということ、そういうものも歴史のなかで発生していること、それが芸術化してみたいと思います。でもこれは大変むずかしいでしょう。そういう可能の諸条件というものは、作品のうしろにおかれ得ないでしょうから。単な人間性のゆたかさというものからだけ描けるものでもないのだし。
こういう美しさが立体的に描き出されてこそ新しい文学の溢れる甘美さはあるのでしょうけれどもね。
この頃かの子の文学の本質がわかるようです。彼女の小説は女がかいた小説ではなくて、小説の肉体は男の肉体での文章やコンストラクションや何か。