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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

この頃の武者にも通じたところがある。

明月にひらかれた詩集のはなし。ね、この文章に対して私は何ということが出来るでしょう。その詩が、一度よりは二度と味いを増しつつ朗々と吟誦されたとき感歎に声もなしという風だった、そのような状態が私にさながらそのままにかえって来るようです。ヒローたちの自然さ、逞しさと、云いようない優雅さの流れあった姿。そして、真に天真なものの厳粛さも何とあらゆる曲折のうちに充実していることでしょう。

私は、詩集をくりひろげるごとに、ヒローの優雅な気品への傾倒を深めます。この傾倒の深さ。致命的ね。この感覚の中に生と死とが貫かれています。年毎に、こういう味いが深まってゆくというのは、何としたことでしょう。それほどあの詩は大きい実質なのですね。ね、私はあの詩が好きよ、本当にすき。あなたの手をとってそう云ったら、私は眼へ涙がいっぱいになるでしょう。そのときあなたは何とお答えになるでしょう、絣の着物の袖から手を出しながら、「ああいいよいいよ」、そうおっしゃるでしょうね。その窓の彼方には緑色に塗られた羽目があるでしょうか。

今は夜で、あたりはごく静か。