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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

暫くそのままにいます。このなかで書けるといいのに。こんな部屋の暗さ明るさのかげの交った光景は、夏の暗い部屋を思いおこさせます。その暗い涼しい夜の部屋へどこからともなくさしこんで来ていた光りを思いおこさせます。足さぐりに来て、ぶつかる体をそこに感じるようなそんな心持を思いおこさせます、静かな明暗のうちにある深い快い眠りを思いおこします。これからの夜には、こんな明るさ暗さがこの二階の部屋にも訪れます、何と面白いでしょう。何と様々の情景をふくむ明暗でしょう。

きょうは、朝からあの刻限まで獅子奮迅の勢で古典研究の歴史文学について二十九枚かき終り(半分はきのう)深い興味と感想をもってかき終り、そーらすんだと下りて速達にして、御飯たべてそこへ『都』のひとの来たのを、御飯たべたべ喋って(仕事のうち合わせ)出かけました。

三日まで行かないつもりでしたけれども、どうしてもそれではもたないのですもの、仕方がないわ。御褒美をいただくというわけでダーとかけつけたわけです。

それからのんきに根津山の新緑の美しさ、その新緑のなかに黒い幹々の新鮮な色を絵にかきたいと思いながらかえったら玄関にかけて待っている人。