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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

子供のための雑誌をやる人です。チャペックの訳をしたりしている人です、チャペックのあのつよい面よりはそうでない面からチャペックの芸術にふれ近づいて行ったという人柄の人です。私の知っている娘さんと結婚したばかり。その人といろいろ編輯上の話をしていたら『古典研究』の若い人が来て、秋の特輯の下相談です。玄関で中腰で話す。私に芭蕉の抒情性をかけとのこと。日本文学の抒情性特輯の由です。私が先頃『新女苑』に芭蕉のことかきました。それがよかったからとわざわざすすめた人がある由。しかし三十枚もそういうものをかいていたら又々私の小説は消えてしまいますから、大体においてことわります。日本文学の抒情性というものは、それは正確に扱われなければならないものではありますけれど私一人ではやりきれないわ。そうでしょう?

そんなこんなが一応片づいて午後四時すぎ。寿江子が来て、悄気て私の膝を枕にしてころがったから頭をなでていてやったら、寿江子のつかれも癒ったようですし、私の気持も又のんきになりました。寿江子は和音の教師が(作曲上のテクニック)みみっちい気持で教えおしみをすると云ってしょげているの。