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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
お嫁さんへは御木本から買ってゆきましょうか、指環でも。
私は本が出る年でよかったとしんから思います。明日おめにかかってこのよろこばしき不意打ちをおきかせいたします。
私はこれから十五枚ほどのものをかかなければなりません、そして、三日までは残念ながら二十四時間を手前勝手に区切ってつかわなければなりそうもありません、どうぞあしからず。
富ちゃんの方はどうするのでしょう、「きのう家へかえった、あとふみ」という電報が来ました、家へかえったのは一人なのか二人づれなのか。こちらの方のことに関しては、おっしゃるとおりにいたしますからどうぞ御安心下さい。自分の感情でほどをはずれたことはしないつもりですし。又そのような立場でもないし。
お母さんは全く上気せて眼をキラつかせていらっしゃる様子が文面に溢れて居ります。どっちにしろ多賀ちゃんをつれてゆきます。そういう忙しさで私一人では助手なしでは迚もつかれてしまいますから。多賀子もあれこれで亢奮つづきです、いろいろなことがある年ね、ではこの手紙はおしまい。本当にお大事に。
五月三十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕