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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

「北極飛行」本当にすきです。幸福ということは、どういうことかなどとよく論議されたが、主観と客観の幸福がああいう形で一致し得るということは、何という明るいよろこびでしょうね。多くの世界では、その二つがくいちがっていて、客観的な条件は、その歴史性でとらえてだけ主観的に体得される幸福のよりどころとなり得る関係です。

小樽のおばあさんをつれて、てっちゃんの家で夕飯をたべていたとき、静岡の大火のことがわかりました。(十五日)何しろあすこは鶴さんの故郷ですからびっくりしていたら、いいあんばいに、六千戸もやけたその外廓で、わずか一二町のところで、三軒ともたすかりましたそうです。よかったこと。今の火事は本当に気の毒です。ものがないもの。そしたら皆おじけづいてね、動産ホケンかけようと云いました。本だって何だって大変です。このラワンの机が今こしらえたら70ぐらいですって。二十円そこそこのものでしたが。48.00 だったこのシモン Bed なんか大した財産というので大いに笑いました、鉄成金になった、と云って。十倍として見ろ、なんて云うんですもの! この動産ホケンのことは真面目に考えて居ります、僅の掛金ならやります。