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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
ああ何とつかれていたろうと、今しみじみと八月を思いかえします。床のシーツがねまきをとおしてぬれるのよ。歩いてそちらに行っているとき、帯の下は洗ったようです。汗で力をすいとられるようでした。
汗の出なくなるって、何て力がたまるだろうと、この頃は(やっぱり汗はかくけれど)ホクホクです。御同感でしょう。
つたはまだしげって日よけに役立ちましょうか。
歯はいかが? もとなおしたのではないのでしょう。
きのうはあれから七時ごろ迄上野にいました。中島湘煙女史というひとは、漢学で教育されたのね。啓蒙的なことをむずかしい漢文の用語でかいています。漢詩もありました。そして、女は文学の仕事をしやすいと云っている。小さい帖面を茶の間の台所の隅においても出来るから、と。それが(文学が)どんなに女にとって大したことであるかという事実を、明治以来七十何年かの歳月が証明しているわけでしょう。文学的なひとというのではなくて、文学の教養をもった人という人です。文学のこととして一葉がああいう扱いをうける必然もわかります。一葉は小さい手帖でちょいちょい文学が出来るとは考えなかったのですから。