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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
顕治本など読みてありぬ。七日ほど経て鶴次郎吾が草の庵を訪れぬ。格子引き開くるより『非常のこといで来たり。非常のことなり』と云ふ。『何事ぞ』と云へば『百合子婚せり。非常のことなり』といふ。『男は誰ぞ』『誰そか思ふ』『知らず』『顕治なり、宮本なり、非常のことなり』やゝあって、『いづれより云ひ初めけむ』と云へば、鶴次郎から/\と打ち笑ひ『相寄る魂なるべし』」
最後、なかなか秀抜でしょう? ハアハア笑いました。
うれしくてハアハア笑うというのいい心持よ。そして、私を十六日にそんなに笑わすなんて、なかなか味なことです。拈華微笑的微笑もおのずと口辺に漂わざるを得ません。だって、そうではないの、同じスポーツの用語を問いの形で出されることがあるだろうと、優雅なますらおは予想していたでしょうか。それからのサスペンスもなかなか賞翫にたえるものであると思います。ああいう瞬刻のサスペンスを、破らず深く保ちつづける情感そのものが、それから以後、きょうの心にある持続性と本質は一つであることが実にはっきり感じられますでしょう? そういうことが益※(二の字点、1-2-22)わかって来て、私はあのサスペンスの趣をいよいよ愛し尊重いたします。