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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

又いつか春でも、用事なしで行って、お母さん京都へお連れしようと思います。本願寺を御覧になりたいんですって。私は大市という古い家のすっぽんがたべたいわ。これは日本の食物のなかの王ね。お母さんきっとそれをあがると陽気におなりになるでしょう、おさけで煮るから。

ああ、それからね、お母さんへお手紙の折、赤ちゃんをお守りなさるのに、おんぶしたりするような長時間のお守りは決してなさらないように云っておあげになるといいと思います、お体のために。子供の重さは日毎に加わって、体に案外きつくこたえるものです。

お母さんは赤ちゃんが生れたら守りをしなくちゃならないときめて、うれしいながら、いくらか悄気ていらっしゃるのよ、先から。あたりの年よりが孫たちの世話で躰をつかっているのを見ていらっしゃるから。今は店はしもたや同然だから、体のえらいようなお守りの必要はないのですから。

ああ、そう云えば羽織ね、大したお気に入りです。よかったことね。

私は明日、明後日と時評をかき終って、それからこまごましたもの、月末から十二月初旬までかいて。それから『文芸』のをすっかりまとめて十日位までに完了にいたします。