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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

すこし先日来お疲れの気味なの。会の話ね、きょうお話した。あれはあのような調子でやって参ります。日本文学者会もボスぶりがなかなかで、この先週の集りには集ったもの三人とかの由。そうでしょう、流行作家たちですから。暮の稼ぎははずせませんでしょうから。いろいろおもしろいことね。同人雑誌の大合同というのを仕事に一枚加えて、よび集めて、タケリンいきなり国民文学をつくれ、と云ったのだそうです。そういったって判りはしない。皆色をなしてね、意見らしいものが出ると、同先生が座長に自選していて、そりゃ、君いかんよ、と意志表示をするのですって。さすがに若いものは正直だから静岡のは席をけってかえった由。文学をつくる人間のうつりかわりは案外こういうところからです。これも歴史の面白き有様。

せっせ、せっせと掘る。どうだ上手に掘るだろう、気づいてみたら、頭の上はるか土がうずたかく、外の景色はいつしかうつりにけりというようなスピードですから。

戸塚夫妻は蓼科高原に御逗留です。ここにも一つの笑話があるのよ。蓼科は日本で只一ヵ所海の気流に左右されない真の高原地帯なのですって。実に療養に理想的空気で、しかも坪五十銭で十ヵ年契約で土地をつかえるのですって。