轻松读懂日语经典作品
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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
「なぜだ――」母と子、兄と妹であるのに、ひとこと相談するだけの値打もないのか。
「――わからない」
彼は手の指で眼を押え、それを軽く押しつけながら「おれには、わからなくなった」と呟いた。飲んでやろうか「飲むぐらいの銀はある」そうだ、もう母に仕送りをしなくともよくなった。これからは、毎月の手当を好きなように遣うことができる。これまでは唯一の目的のために、あらゆる欲望を抑えて来た。切り詰めるだけ切り詰めて、故郷へ仕送りもしたし、修行の妨げになるような事には眼もくれなかった。
――だが、そうしてもなにも得られなかった。
千葉道場の掟は厳格だが、みんな道場の外では適当にやっている。酒も飲むし、美味い物も食べるし、遊廓などへもゆくようだ。しかも道場では代師範をし、大名諸家へ出稽古をする。
「これが世の中か」と、深喜は呟いた、「これが世の中なら、おれのして来たことは道化に似ているぞ」
彼は眼から手を放した。
深喜の顔が自嘲に歪み、眼がするどく、苛立たしげに光った。彼は立って納戸をあけ、手文庫の中から紙入れを出した。中に一分と、少しあった。
「いいだろう」
と、彼はそれをふところへ入れて着ながしのまま刀を取って廊下へ出た。