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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

そして体から力がぬけてしまったように、くたくたと横に寝ころんだ。

幹太郎はその寝姿をしばらく見まもっていたが、やがて勝手へいって、水瓶の水をなん杯も飲んだ。勝手はきれいに片づいている。彼がそこで見た皿小鉢や徳利は、さっき来た仕出し屋の者が持ち去ったのであろう。

――いったいどんな人間が来ていたのか。

幹太郎はこう思いながら溜息をついた。

幸坊といっしょに蒲団屋が貸し蒲団を背負って来た。貸し蒲団という商売のあることは、このまえにお豊から聞いたことがある。

幹太郎は借り賃を払って、蒲団屋を帰し、自分のを四畳半に敷いた。――それから、幸坊にてつだわせて、食膳をざっと片づけ、六畳へ二つ寝床を敷いたのち、お豊を揺り起こした。

幸坊は「起きやしないよ」と云った。そのまま寝かしとけばいいよ、お酒を飲むといつもごろ寝をしちゃうんだ。風邪をひくじゃないか、寝床へ入れてやればいいさ、いつもは、放っておいても独りではいるんだ、と幸坊は云った。

幹太郎はお豊を抱いて、寝床の中へ移した。

「うーん、いやだ」

と、お豊は手を振った。触っちゃいやだ、あたし眠いんだから触らないでよ、そう云って寝返りをうち、そのまま眠ってしまった。